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発売5日で重版!
東京堂書店 週間売上1位を記録! (12月11日調べ)
三省堂書店  神保町本店
  ノンフィクション部門にて売上げ第10位を記録!

書肆アクセスという本屋があった
――神保町すずらん通り1976-2007

2007年11月17日を最後に「書肆アクセス」が神保町すずらん通りから消えてしまいました。
この店は、地方・小出版流通センターのアンテナショップとして他の書店では見つからない本を扱うというだけでなく、本好きが出会い、集い、情報交換をし、そこから新たな試みが始まるという場所でした。
貴重な存在である「アクセスという場所」の記憶を、本のかたちとして留めたいと思いました。本書には、出版社、書店、著者、読者などさまざまな立場でこの店に関わった100人以上の文章を掲載しています。 また、店内の写真やイラスト、年表、文献目録なども収録しています。

四六判並製小口折カバー・248ページ
装幀:林哲夫

ISBN978-4-8421-0704-2 C0023
本体 1,143円 + 税
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書肆アクセスという本屋があった――神保町すずらん通り1976-2007
書評

「朝日新聞」2008年2月17日付け
朝日新聞書評画像

ふらりと立ち寄る本屋さんのように
評・重松清(作家)

書肆アクセスとは、編者の一人・岡崎武志さんの言葉を借りれば<大手の新刊書店ではなかなか目に触れない、地方や小出版社の本、そして多くのミニコミを扱ってきた>書店である。 出版の東京一極集中が進むなか<地方からの微力な電波を受け止め、発信する役目>を負い、<十坪という狭い空間に約六千七百点もの本や雑誌たちの主張や心意気が充満していた>。
そんな書肆アクセスが、昨年11月に閉店した。本書はそれを惜しむ人たちが、本を出す側として、あるいは読者や同業の書店員として、それぞれの立場から思い出を振り返り、 惜別の辞をつづった寄稿集--いわば、身内の<心意気>に満ちた一冊である(本書の制作にあたっては、カンパによる基金もつくられたという)。
この種の本はアットホームな温もりがある一方で、往々にして部外者には立ち入りづらさも感じてしまうものなのだが、本書は違う。ふらりと立ち寄ることのできる町の本屋さんさながら、 いちげんさんにも開かれている。じつを言うと書肆アクセスには数えるほどしか入ったことのない僕が、センエツを承知でこの一文を書いている所以も、そこだ。
本書の中に、こんな一節がある。<書肆アクセスという小さな場所の大きさと頼もしさ>--神保町や書肆アクセスという固有名詞をはずし、書店というくくりもあえてはずして振り返ってみると、 居酒屋でもレコード店でも文房具店でもいい、「私たちの町」にもそいういうお店はあるはずで、あったはずなのだ。
本書につどう書き手の<心意気>は、一軒の小さな書店を語りながら、「地方」や「個」が切り捨てられる時代に対する寂しさとやりきれなさ、そして静かな怒りにも、確かにつながっている。 それは「書肆アクセスという本屋があったことも知らない」世代が増えるにつれて、いっそう重く響いてくるだろう。
その意味でも、本書は決して内輪話や古き良き時代への郷愁で閉ざされてはいない。地方在住の若い世代にこそ読んでもらいたい、と思う。



「朝日新聞」2008年2月13日付け夕刊
朝日新聞連載記事画像

ニッポン 人・脈・記
わが町で本を出す(13)
こんな時代こそヤセ我慢

古本の町として知られる東京・神田神保町。昨年11月17日、小さな書店が31年の歴史を閉じた。
「書肆アクセス」。全国でただひとつ、地方出版社の本を専門に並べる店だった。
夕方6時半、シャッターを下ろしに出た店長の畠中理恵子(44)を、大勢のファンが待ちかまえていた。「長い間、ありがとうございました」。あわててあいさつする畠中を温かい拍手が包んだ。
この書店を運営してきたのは「地方・小出版流通センター」。地方の本は大手取次店に扱ってもらいづらい。全国に届けるには新しい流通のしくみが要る。そう考えた川上賢一(58)が76年につくった会社だ。地方の出版社にとっての動脈となる。
当時、川上は新宿のミニコミ書店「模索舎」で働いていた。模索舎は『四畳半襖の下張』の冊子を置いたのがワイセツだとして摘発され、表現の自由をめぐる裁判の真っ最中。川上は「流通の自由」も確保したかった。
書肆アクセスは33平方メートルの店内に約1万冊が天井までぎっしり。地方に生きる出版人の意地と誇りが立ち込める空間だった。
だが年々赤字がかさむ。熱心なファンはいても、このままでは経営が揺らいでしまう。川上は苦渋の決断をせざるを得なかった。
この出版不況を生き延びないと元も子もなくなる。「流通の自由」だけは守らねば。
(略)
自分の町で本を書く人がいる。その本を出す人がいて、読者に届ける人がいる。みんな「ヤセ我慢」をしながら志を貫いている。
(編集委員 篠崎弘)



「産経新聞」2008年2月3日付け
東京・神田神保町で、地方や小出版の本を扱う書店として親しまれ、昨年11月に閉店した「書肆アクセス」に縁のある出版社の編集者、同業書店員ら80人以上が閉店を惜しんで文章を寄せた『書肆アクセスという本屋があった』(右文書院)が版を重ねている。
書肆アクセスは、地方出版社や少部数出版の専門取次である地方・小出版流通センターのアンテナショップとして昭和51年に開店、56年に神保町に移転した。大手取次では扱いにくく、 一般書店では手に入らない本が入手できる書店として知る人ぞ知る存在だった。
「ミニコミ誌や無明舎出版(秋田)や南方新社(鹿児島)など地方出版社の本を専門に扱う店は東京ではここだけだった」と右文書院の青柳隆雄さん。 昨年、閉店を知った客の有志7人が基金を作り募金を呼びかけ、集まった資金で本書を制作し、昨年暮れに刊行。現在は2刷が書店に並ぶ。同店の機能は縮小され、 三省堂書店神保町本店の地方出版・小出版物コーナーに引き継がれている。

「週刊朝日」2008年2月1日号(土屋敦氏)
「小さな書店の大きな喪失」
昨年十一月、神保町にある小さな書店・書肆アクセスが閉店した。わずか十坪の空間にミニコミ誌、全国各地の地方出版社の個性的な本がぎっしりと並べられ、地方から発信されたエネルギーに満ち溢れたリアルな活字文化の小宇宙とでもいうべき店だった。
そんな貴重な場所の閉鎖に際し、関係者が思いを綴ったのが本書だ。伝説的な地方出版社である無明舎、南方新社、弦書房の代表や、「酒とつまみ」「中南米マガジン」「sumus」、沖縄の「ワンダー」に北海道の「なまら蝦夷」、老舗「谷根千」などのリトルマガジンの編集者らが寄稿している。それだけで、好きな人にはたまらないだろう。
本書を読めば、書肆アクセスというごく小さな書店の喪失によって、日本の出版界が一変してしまったことがわかるはずだ。多様で、豊饒で、雑多な活字文化のエネルギーをこれ以上に失わないために、われわれは何をすべきなのか、深く考えさせられる本である。

「出版ニュース」2008年1月下旬号
本の街・神田神保町にあって地方出版社や小出版社の本を提供してきた「書肆アクセス」は昨年11月に、業績の不振から閉店を余儀なくされた。アクセス閉店を惜しむ人たちの手により『書肆アクセスという本屋があった――神保町すずらん通り1976-2007』(B6判・235頁・1143円+税・岡崎武志/柴田信/安倍甲編)が刊行された。
書肆アクセスは、取次の地方・小出版流通センターの直営店として1976年、「展示センター」の名称で営業をはじめる。80年に「書肆アクセス」と名称を改め、センター契約外の出版社の刊行物も仕入れる「独自仕入システム」=「書肆アクセス仕入」を開始。翌81年に神保町のすずらん通りに移転し営業を続けた。
本書は、地方出版・小出版の発行者、同業の書店員や古書店員、常連の読者や著者、それにアクセスに関わった従業員ら80人が、思い出や惜別の声を寄せる。
地方出版の雄、無明舎出版(秋田市)の安倍甲氏は、アクセスは無明舎の東京支店のような扱いであったと言う。〈「アクセス」は私にとって東京での待ち合わせ場所であり、出会いのサロンであり、出張中の緊急連絡先兼荷物置き場だった……〉。
南陀楼綾繁氏は00年4月から05年4月まで、ほぼ5年間に書肆アクセスから買った本のリストをあげる。合計244冊、アクセスは、あるテーマや著者に興味を持ったとき、何らかのヒントになる本が見つかる店であった。そして〈このリストによるすべてを包み込んでいた小宇宙は、もうどこにも存在しない〉と述べる。
巻末に「「書肆アクセス」関連年表」、関連の「主要文献目録」が付く。
書肆アクセスの日常については店長であった畠中理恵子さんらによる『神保町「書肆アクセス」半畳日記』(無明舎出版・02年)がある。
書肆アクセスの機能は縮小されてはいるが、同じ神保町の三省堂書店の4階、「地方出版社・小出版社」コーナーに受け継がれている。
目次

はじめに 編者代表 岡崎武志
イラストレーション 内澤旬子
 
甘えっぱなしで、ごめんなさい 安倍甲
アクセス畠中さんへのメール三通 岩田博
畠中さんの手書きの名刺 山川隆之
地方と小出版社ということ 樽見博
営業はこの店から始まった 大竹聡
遠く離れた本屋さんへ 新城和博
アクセスに思う 小林直之
書肆アクセスで売って買って 田中栞
畠中さんのいるお店 市川慎子
もう当てにはできない 山本善行
いつかまたどこかで 三宅秀典
アクセスからのアクセス 渡邊慎也
『吉本隆明資料集』と書肆アクセス 松岡祥男
こんな縁 佐藤健太
最新号はまだですか? 川島育郎
アクセス閉店で思ふこと 舘浦あざらし
地方文化の見直しを 永井伸和
書肆アクセスから授かった時間 佐藤健児
すずらん通りはさびしくて 山崎範子
土の匂いが消える 向原祥隆
うれしかった一言 松岡つとむ
書肆アクセスと本と旅とそれから。 すずきさち
列島小出版苦闘の軌跡 三原浩良
皆で、「書肆アクセス」復活宣言を 柳ヶ瀬和江
神保町の臍 飯澤文夫
アクセスが播いた種を、こんどは福岡で 藤村興晴
 
書肆アクセスは旅人が憩う一本の木だった 岡崎武志
不思議な、寂しさ 鈴木力
私の〝本好き〟の一割は、「書肆アクセス」でできている。 飯田真由美
丸の内から徒歩三十分 藤田加奈子
本との距離が近くなった 竹内啓
神保町の心臓 瀧口宏
正夢であって欲しい「再スタート」のお知らせ 大貫伸樹
小さな声の聴ける場 増井潤一郎
温かなお店の気配 松本典子
「東京者」コーナー出現 堀切直人
道しるべが一つ消えてしまった 三五千波
書肆アクセス・デッサン帳 林哲夫
映画図書室とのかかわりを通して 笹沼真理子
十坪の宇宙の喪失 佐藤美奈子
なにか気の合う店 濱田研吾
書肆アクセスと私 萩沢宏行
薬味不足 鈴木地蔵
立ち止まって見つめる 木村寿海
田舎者にとっての「書肆アクセス」 堀内恭
書店文化を消すな! 古賀邦雄
もっと「アクセス」を体験したかった 退屈男
「引き揚げる」楽しさ 今 柊二
書肆アクセスの傘立て 宮崎達生
二度とお目にかかれぬ品揃え 串間努
北の国から 吉川和代
書肆アクセスは文豪への第一歩? メイ
アクセスのワゴン 荻原魚雷
他人の不幸は蜜の味 塩山芳明
ある書店の消滅 本多正一
添えられてくるもの 津田京一郎
何か面白い本はないですか? 堀内倫子
摘録・書肆アクセスで買った本 南陀楼綾繁
 
書肆アクセスは「今」 柴田信
本屋として客として 倉繁修一
本と人を支える場所 宇田智子
ごきげんよう、アクセスの皆様 藤崎滋男
書肆アクセスと「路地裏マップ」 守屋淳
神保町・書肆アクセス 内堀弘
幻の岡山文庫フェア 田中美穂
アクセスの新着本コーナー 三浦健
神田村と「アクセス」 青木純一
神保町の拠り処 笠間祐一
畠中さんに惚れた夏 福岡宏泰
背表紙から伝わるもの… 粕谷亮美
一古書店員から見た神保町
――消えた立ち食い蕎麦屋、そして書肆アクセスのことなど
小林中也
模索舎とアクセス・地方小 五味正彦
 
書肆アクセスへのメッセージ
近代ナリコ みさきたまゑ 中村賢一
街の草・ロードス書房 言水ヘリオ 黒岩比佐子
根岸哲也 出光良 勝川克志
織田全之 神保町のオタ 千脇孝裕
川口和正 中津千穂子 天野みか
田原陽介 土井章史 湯本理子
福井康人 門田克彦 中山亜弓
綿貫真木子 海野弘  
 
わが青春のオアシス、「書肆アクセス」 大原哲夫
大切な場所 長峯英子
自分に効く薬 阿部はるみ
「自由民権コーナー」があった頃 谷口桂子
書肆アクセス〝三代目〟店長 青木一男
私の十年八ヶ月 浅川まどか
書肆アクセスでの日々を振り返って 黒沢説子
私の大好きなアクセス 西川あずさ
 
「書肆アクセス」関連年表
「書肆アクセス」関連主要文献目録 根岸哲也 編
あとがきにかえて 畠中理恵子