これからの文学研究と思想の地平松澤和宏 田中実 編著
今日の私たちが直面している文学研究や人文学全般を覆う「混迷」なるものが実は根の深いところで、近代デモクラシーの社会における価値相対主義や個人主義の蔓延と繋がっていること、
その意味では「混迷」はむしろ歴史的に不可避ですらあるという苦い認識なしには、少なくともわたしには「これからの文学研究と思想の地平」を遠望することなど到底できないように思えたのである。
装幀:近江デザイン事務所
A5判並製カバー/368ページ ISBN978-4-8421-0089-0 C3095 定価:本体3,400円+税 |
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[目次]
まえがきに代えて 田中 実 1 テクスト論の行方 ロラン・バルト『明るい部屋』とソシュール -審美的個人主義・共通感覚・伝統的時間をめぐって- 松澤和宏 国文学に「偉大な敗北」はあるか -人文学の総崩壊を目前にして- 前田雅之 間テクスト性 原田邦夫 小説ディスクールの戦略 赤羽研三 詩のテクストと〈声〉 高木裕 テキストの外から、そしてテキストの外へ 吉田裕 十八世紀フランスの饒舌な他者 -サド- 宮本陽子 2 批評と〈政治〉 記憶と表象 -ナラティヴをめぐる随想的断章- 原仁司 デモクラシーと人間 -トクヴィルの政治哲学- 宮代康丈 社会科学と批評の間 -戦後日本における知の連関- 宇野重規 3 個別作品読解 語りと記憶 -『山月記』と多喜二の二作品- 亀井秀雄 〈読み〉の更新 -浜田廣介「鬼の涙」を読む- 馬場重行 4 文学論と批評 小説/ノヴェル/ロマンとは何か -概説と私見- 中山眞彦 文学への懐疑 -中村光夫を文学の現在に取り戻すために- 菅谷憲興 大学改革の中の文学教育・文学研究 服部康喜 作品論・テクスト論・文化研究 -グローバル化のなかの文学研究- 岩佐壮四郎 〈批評〉の復権、〈文学〉の復権 -〈近代文学の終り〉という発言をめぐって- 佐藤泰正 小説は何故(Why)に応答する -日本近代文学研究復権の試み- 田中実 テクストの解釈学へ -あとがきに代えて- 松澤和宏 |
原理的地平からの文学再生・再建への提言。