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月性を読む
幕末「海防僧」の漢詩と建白書

愛甲弘志・上田純子 編著

真実の憂国詩と建白書、『月性を読む』で解き明かす。 
「封事草稿」と「内海杞憂」とは、本書において初めて、その全文が公刊される。
月性の言論活動・政治活動の2大テーマである ‟藩政改革”や‟尊王攘夷”に関し、その地域的・歴史的・思想的状況を詳しく注釈する。

四六判並製・344ページ

ISBN978-4-8421-0828-5 C1095
定価:2,750円(10%税込)
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目次

月性とは誰か
はじめに・・・上田純子 
Ⅰ 漢詩選  愛甲弘志
解説 時代が動く、詩魂がたぎる 

異郷のうた 
懐いを秋晩香に寄す
精里除夜
雨中に長崎に入る
旅夜

コラム 漢詩豆知識

故郷のうた
丙申早春
村外散歩
広島自り遠崎に帰る舟中
古紙を検して土井士強の戯れに余の肖像を画けるを得たり
日前途上口占

交情のうた
珮川先生令嗣立大君を携えて余を精里の寓居に訪ねらる 前韻に畳ねて以て呈す
臥虎山の歌坂井先生に贈る

志のうた
亡祖聞名院の大祥忌に賦して以て懐いを誌す五首
将に東游せんとして壁に題す 二首

憂国のうた
詩を作る
執政浦大夫父子延見す此を賦して下執事に呈す
紙鳶
雨中に須佐に入る

コラム 幕末維新の漢詩

写真 「作詩」稿本

Ⅱ 建白書  上田純子
解説 方外にあって、天下国家を論ずる

封事草稿
解題

閣下の立派な御意志に応えて、直言いたします
天、幕府の失政を怒る
天変地異と外国船の来航
二百余年の太平の末に
戦って後に備える
今こそ王政復古の好機会
非常の変乱には非常の政治
改革すべきは速やかに改革を
改革には能力主義の人材登用を
権要の職は頻繁に交替させない
漢室中興の祖、宣帝の治世に学ぶ
非常の改革は適材適所の人材登用から
倹約令は、枝葉末節、本末転倒のありさま
参勤交代の経費を削減せよ
奥向きをはじめ江戸邸の経費を削減せよ
幕府対策機密費を削減せよ
千載一遇、相模国の警衛は大改革の好機会
特別会計の撫育金を放出せよ
参考=秋良敦之助欄外加筆
決然と国家百年の大弊改革を

コラム「清狂」する月性―清狂の号について
写真 尊攘堂本「封事草稿」内表紙

内海杞憂
解題

民間在野の〝王臣〟として、国家の大事を論ずる
海辺防備の空白を杞憂する
〝孤島〟大島郡の海防五策
大義が廃れ、利欲がはびこる時代に
民を勇者とするには
民を訓練して戦う兵士に
土着屯田の民兵組織を
贅沢品を武器に
火薬は地元の原料で
民が大義を知れば
大島一郡から日本全国へ
写真 周防大島-大畠瀬戸-遠崎

海防意見封事
解題

今まさに天下の心配ごとは…
危機に立たされた仏法
仏法は国のあってこそ
インドは国を乗っ取られ、仏法は滅びた
教えと戦―侵略の二つの手口
神州におけるポルトガル人の渡来、キリスト教の受容と排除、犠牲
教えによって教えを防ぐ、その責は仏者にあり
ひるがえって今の仏者を省みるに…
仏法への非難排斥、まずは自省して改めよ
自ら振起して護法を誓う
他力信心を得たからには、公事を疎かにしてはならぬ―説法⑴
今日最重要の公事、それは海防である―説法⑵
心を一つにして諸外国の誘惑を防ぐべし―説法⑶
生きて勤王の忠臣となり、死して往生成仏せよ―説法⑷
大法主・高僧も天下に教え導きたまえ
今の時にこそ、国家は再び興起し、宗門も再び隆起する

コラム海防僧の誕生

用語解説
清狂文人交遊、そして海防民衆説法―月性の活動略年譜
歴史を紡ぐ人たち―あとがきに代えて 愛甲弘志
謝辞 公益財団法人僧月性顕彰会